変わっていく現実の中で
誰にも言えなかった感情たちが
生まれた言葉たちが、ここにある。
2020年、高円寺の路上で偶然知り合った知多良監督とグッナイ小形が「きみは、ぼくの東京だった」MVを制作。その後、スピッツの草野マサムネらが楽曲を紹介し話題に。そのMVから知多監督の清掃会社での実体験をもとに取材を重ね、3年かけて完成した映画『ゴールド』。
「ありのままでいい」という優しい言葉とともに、女も男も「自分らしく」生きられる社会が理想とされている。——けれど、現実はそうはなっていない。
誰かに傷つけられ、それなのに誰かを傷つけてしまう毎日で、声を上げれば立場を失い、黙っていれば心が削られる。なにが正しいのかも分からない。そんな場所で、今日をやり過ごすことに精一杯な人たちがいる。誰もが「ありのまま」では、生きていけない。
終わりのある時間の中で、誰かと共に生きる人々の姿を描いた、ショート動画では味わえない、120分の濃密な映画体験。5つの映画祭で6つの賞を受賞した映画『ゴールド』がついに劇場公開。
恋愛の先で見つけた、確かな現実
中小企業で事務をしているミキと、家事好きで清掃のバイトをしている弘樹。二人は高円寺の路上ライブで出会い恋人になる。ミキの強さに惹かれた弘樹は、自立した大人を目指し正社員になる。でも、ミキは弘樹に無理をせず毎日笑顔でいて欲しかった。専業主夫でもいいから家に居て欲しかった。
弘樹は男ばかりの職場で、冗談に傷つき、毎晩溜息をつくように。ミキは社会のせいにしがちな後輩と、悪意なくセクハラ発言をする上司の間で疲弊し、ビールの量が多くなる。
稼ぎのない男との付き合いを反対する友人。「あるがまま」なんて甘やかしだと腐すベンチャー企業社長。非難を称賛と受け止める高円寺の飲み友達。「自由とはルールを知ること」と言うアーティスト。
仕事と生活の間で様々な人たちに出会い、酒を飲み、言葉を交わす。ただ、ミキは弘樹と一緒に居たかった。同じ時を過ごしたかった。
佐藤ミキ役 小畑みなみ
西弘樹役 サトウヒロキ
山中由美役 幸田純佳
山田役 松木大輔
あずさ役 関口蒼
八川役 卯ノ原圭吾
三澤役 小野孝弘
東山幸人役 椋田涼
千川役 藤村拓矢
秋田役 武田祐一
宮尾役 ゆかわたかし
茜役 加茂井彩音
吹田役 いとうたかし
木野サヤ役 Ksayaka
監督・脚本 知多良
主題歌・出演 グッナイ小形
スチール Fujikawa hinano
【ご支援いただいた皆さま】
地域 | 劇場名 | 公開日 | 備考 |
---|---|---|---|
東京 | ポレポレ東中野 | 10/25(土)〜 | |
大阪 | シアターセブン | 11/29(土)〜 | |
愛知 | 名古屋シネマスコーレ |
コメント
comment
私たちの生活をより良くするために生まれたはずの言葉や行動が、思わぬ角度から違う形をして襲ってくる。繊細で鋭利な台詞の一つ一つが抜け目なく、過去に傷ついた言葉、傷つけたかもしれない言葉を想起させる。どちらも恐ろしくてたまらなかった。
それなのに鑑賞後「折れても良い、生きていこう」と前向きに思えたのはなぜだろう。涙が溢れたのは、決して辛いからではない。振り返れば一瞬のゴールデンタイム。ゴミのような現実だとしても生活は続いていく。けれど一瞬でも輝いていたあの日々がきっと支えてくれる。そう信じさせてくれる。
– 若生俊亮(十三下町映画祭 2024 選考委員)
ミキと弘樹の物語を軸にしつつも、他の登場人物一人ひとりにもストーリーがある。
スクリーンに映らない彼らの心のゆれを想像することは、もしかしたら自分自身や周りの人や世界で起きてる出来事を少しでも理解するきっかけになるのかもしれない。
– 福住恵(有限会社第七藝術劇場 取締役 / シアターセブン イベントプロデューサー)
『ゴールド』やばいですね。
日本アカデミー作品賞をあげたいくらいです。
私、こんなに共感した作品はひっさしぶりです。
脚本、撮影、役者の演技、どれも素晴らしい。
パワハラや女性差別といった現代的な問題を若い登場人物たちが日常の中の喋くりで考える姿が説教くさくなく実にリアルでした。
2時間映画的な緊張感があって特にラストの時間を超えての対話は一本取られた〜!って感じです。
観客は二人がどうなっていくかを見てしまっているので、爽やかな愛の告白に聞こえない複雑さで胸が締め付けられます。心憎い演出ですね。
– 伊藤高志(実験映像作家 『SPACY』『零へ』)
『ゴールド』は本当にやばかった。
刺さりすぎた。
作品的にも表現的にもキャスト的にも技術的にも......etc
言葉を尽くしきれない。
見終わった後しばらく息ができなかった。
胸がいっぱいになった。
個人的に琴線でした。
ここ数年の商業作品含めて本当によかったのでは?
背筋伸びました。
沢山の人に見てほしい。
– 松本慎太朗(美術 『みなに幸あれ』『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』)
傷つける事、傷つけられる事に敏感な時代を生きる中で感じる違和感。無意識、無自覚が可視化されたと感じました。
輝く夢のような時間が焼き付けられたラストに胸が締め付けられます。
知多監督の時代と人に寄り添う心が凝縮された傑作です。
– 酒井潤(福井映画祭実行委員会 実行委員長)